思考実験として、不謹慎かもしれないが、例えば震災の被害を受けたと想定して、生き延びるために必要なことを考えてみる。
・安全な飲み水
・安全な食べ物
・寝られる場所
これは凍えずに、そして外敵に怯えずに、身体を横にして楽に眠ることができる場所のことである。
ここまでが人間として最低限の要求であり、これに加えて体毛や足裏が退化した地球人類は、防寒や怪我を避けるための「最低限の衣類や履き物」が必要であり、衛生の維持のためにも「排泄場所」があるとなお良い。
ここまで満たされれば、あとは医療がないくらいで、仮に無人島だとしても相当年数生きられることは容易に想像が付く。
そして、ことわざでもある「衣食足りて礼節を知る」にある通りで、このベーシックが満たされなければ平和は保てないということである。
日本という国は本当に本当に素晴らしい。
理由を以下に示す。
①安全でおいしい飲用水がほぼ無料で手に入る。
蛇口を捻ると世界最高品質の水が出る。
それは、この国は雨量が多く、国土の大半が山林であり、ゆえに枯れない川が多く、それらは極北の氷河のように冬に凍りつくこともなく、ガンジス川のように汚染もされていない。
その豊かな河川をベースとして、勤勉な国民性から浄水場や下水処理場で水を磨き、網の目のパイプラインを経て、蛇口を捻るだけで最高の水が手に入るのだ。
そして、それほど節約せず、それらの最高品質の水を戸別に引き込み、洗濯や炊事、水洗トイレやたまのシャワーにまで使ってしまっても、1日あたり50円で済む。
②安全な食料が安価に手に入る。
郊外のスーパーマーケットに行ってみよう。
そこは朝から夜まで開いており、明るく衛生的な店内で、例えばモヤシが200gで30円、納豆が1パックあたり20~30円、鶏卵が1個20円、白米は1合あたり50円、牛乳はリットルあたり150円と、
食中毒のおそれがない安全な食料が、作る手間や運ぶ手間を思うと、考えられないほど低価格で提供されている。
例えばキャベツ売り場の前には外皮を剥き捨てるためのカゴがあり、ウサギ用ですと伝えて、タダで持ち帰ることまで出来る。
ところによっては焼いたウインナーソーセージを試食として無償で食べられるところまである。
狩猟採集をせずに、食料調達をすべてスーパーで済ませたとしても、1日あたり300円で暮らすことが出来る。
③安定した電気が安価に手に入る。
諸外国では日々停電が生じているが、日本では一軒あたりの停電回数が年平均0.1回と、これまた世界最高品質の安定した電気が手に入る。
これは、食料保管のための冷蔵庫や、加熱調理のための電子レンジ、日没後の照明、夏の扇風機、猛暑時のエアコン、冬の電気毛布など生活水準の向上に活用出来、節約を心掛ければ1日あたり100円は掛からない。
④ガスも安く使える。
都市ガスエリア限定の話かもしれないが、2日に1回程度、5分のシャワーを浴び、少し煮炊きするくらいならガス代も日に50円を超えない。
⑤通信費は本当に安くなった。
楽天モバイルやpovoなど通信料がほとんど掛からなくなったため、基本的に0円で携帯電話を持つことが出来るようになった。
外のwifiが増えたため無くても済むが、povoの無料の128kbpsですらサイト閲覧やLINE通話が可能で、少しくらい高速インターネットを使ったところで1日30円である。そして機種もタダ同然のものが多い。
⑥住居費も安い
街選びには少しもコツが要るが、政令指定都市の利便性の高いエリアでも、需給バランスが乱れてる街を選べば1日あたり800円で駅から徒歩圏のオートロックのマンションに住むことが出来る。
札幌市郊外なら1日400円にすることも可能だが、北海道は寒すぎて暖房費が掛かるから上手くない。
⑦何より治安の良さ
街行くほとんどの人々は銃や刃物をもっておらず、公園でうたた寝をしても追い剥ぎに合わず、荷物を少し足元に置いても置き引きされない。そして誘拐もほとんど聞かなくなった。
蔓延っているのは特殊詐欺くらいで、財産を持たないものにはそもそも関係がない。
違法薬物もごく限られたところで使用されていて目につかず、暴力を受けることもほとんどなく、女性や子どもが夜道を一人で安全に歩くことさえ出来るのだ。
長々と書いてしまったが、健康で文化的な最低限度の生活をするためには、多少余裕をもたせたとしても一人暮らしなら1日1,500円、二人暮らしなら2,000円あれば足りることが分かる。
稼ぎを減らせば所得税や住民税も不要となり、高額医療まで手厚くサポートしてくれる国民健康保険は、収入がほとんど無い場合で月に2,000円程度、老後死ぬまでここで言う必要生活費を届けてくれる国民年金は免除になる。
私は高校時代の体操服を、卒業後20数年着続けて、ようやく少しほつれが気になり始めた程度で、衣類などもほとんど買う必要はない。履き物も千円、二千円の靴やサンダルで何年も持つのだ。
これは見る人から見たら節約仙人のような生活に映るかもしれないのだが、与えられた生を全うするにはこれで足りるのだ。
そうすれば、週に1~2回、最低時給に近い、負荷の少ない仕事をするだけでも何とかなるということにも気付ける。
仕事で鬱になり自殺してしまうことの滑稽さが分かるだろうか?
そして、この最低限度を踏まえて、好みに合わせて何のオプションやトッピングを得るのかを、優先順位を含めて考えるのが人生戦略なのだ。
「生ける者にとって必要なものは、死せるものにとって不要なものばかり」
これは、ある歌の歌詞の一節だが、
(私は信じていないが)死後の世界が仮にあるとしても、あの世には何もかも全て持っていけないという視点も忘れてはいけない。
人は身体一つの裸で生まれ落ち、その身体すら焼かれて、灰になって終わるのである。
生を終える最期の日までに必要な水と食料があれば足りるのだ。
そして、この世に置いていけるものも本当に僅かであり、たとえばこの文章もその1つだろうが、デジタルデータは大半が20年と残らず、印刷したとて世紀をまたいで人目に触れることは殆ど無い。
教科書などに転載されたもの以外に、100年以上前の文章が読まれることは無く、今から本気で残したいものがあるのであれば、直ぐにでも石板を彫り刻み始めることを薦める。